《Part1:Bluetooth遅延の計測》 と 《Part2:理論値とiOS実測データ》では、Bluetooth遅延の定義をした上で、遅延を抑制する方法についての紹介と、Bluetooth遅延の理論値およびiOSによる遅延実測データを公開しました。
続くPart3では「Androidデバイスで遅延結果のデータ」をお届けします!
※レポート内は市販の完全ワイヤレスイヤホン(左右分離型)から、8台を選び検証を行った結果に基づいています。公開データは認証試験機構Allion Lab(ラボ.アリオン)によるものです。またBluetooth遅延レポートの専門性、公平性、客観性を確保するため、私たちはISO / IEC17025 認証を取得しているラボ、25年以上検証を専門に手掛ける機構Allion Labに、今回のBluetooth実測を依頼しました。
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|AndroidにおけるBluetooth遅延の計測とは|
AndroidにおけるBluetooth遅延について語る前に、まずはAndroidとiOSが基本ソフト(以下は「OS」と言います)として異なる部分である「Transfer Encoding」について説明します。
Androidデバイスでは開発者向けオプションでBluetooth伝送コーデックの設定を調整することができ、このコーデックの違いがBluetooth遅延の原因となり得ます。
AndroidとiOSはそもそもOSの構造が異なり、Bluetoothコーデックが複雑であるほど、データの圧縮/解凍により多くの時間がかかります。このため、OSが同じであれば、ビットレートの高いapt-XやAACの音声データ伝送速度は必ずSBCより遅くなりますが、その代わり音質はSBCより相当良いものとなります。
なぜiOSのAACはAndroidのAACよりはるかに速いのかということについては、音声の遅延にOSが及ぼす影響は大きいというのを考えられます。
Androidデバイスでは、左右のうち先に片側に経路を通すTWS(トゥルーワイヤレスステレオ)か、左右同時に経路を通すクアルコムTWS Plus (TWS+)に対応しているかの違いがあります。TWS+に対応するAndroidデバイスであれば、音の遅延は一般のTWS対応機種よりもかなり抑えることができます。
※AERO 完全ワイヤレスイヤホンはデバイスのOSがAndroidでもiOSでも、いずれも左右同時に経路を通します。
|Bluetooth遅延:Androidの計測法について|
Androidデバイスに対応するBluetoothコーデックは幅広くため、現在市場で普及している多数を占めるSBC、AAC、apt-X、apt-X TWS+、apt-X Adaptiveといったコーデックを考慮し、今回の実験で使うAndroid機種として、Xiaomi(シャオミ)の9T PROを選びました。
計測方法はiOS実測に対して行ったものと同じく、高速カメラを使って各完全ワイヤレスイヤホンの遅延を計測しました。ゲームアプリはタッチ操作によるため、システムの処理上必ず遅延が起きます。Bluetooth遅延を見極めるため、計測時には有線イヤホンの遅延を除外することで、Bluetooth信号伝送の遅延データを計測しました。
Step 1:イヤホン(有線またはワイヤレス)をスマートフォンに接続
Step 2:ゲームアプリを起動させ、高速カメラでゲームプレイ画面を撮影、同時にマイクを使ってイヤホンから出力される音を集音
Step 3:画面の変換とイヤホンから出力する音声を比較し時間差を観測
Step 4:ワイヤレスイヤホンと有線イヤホンの時間差を計算し、Bluetooth遅延データを得る
- Bluetooth遅延 Android 計測結果 -
データから見ると、以下の点をまとめることができます。
1.Androidシステムの特徴として、一部のイヤホンコーデックは自在に切替ができない。
2.apt-Xコーデックでは、おおむねAACよりも遅延が多少伸びた。
3.SBC コーデックでは、大多数のイヤホンで遅延は比較的抑えられている。最も音ズレの少ないAERO完全ワイヤレスイヤホンは、ゲームモードでは最短45.8ms遅延まで抑えられている。
4.AAC コーデックでは、ほとんどのイヤホンで明らかに遅延が伸びている。ラボの実測データによると、A社完全ワイヤレスイヤホン2はiOSデバイスでは遅延が87msまで抑えられたのに対し、Androidデバイスでは216ms(もちろんOSとの互換性も関連あり)に達した。このモードで最も速かったのはAERO完全ワイヤレスイヤホンで、148msを記録した。
6.VERSA完全ワイヤレスイヤホンは対応しているTWS+のapt-Xコーデックでは、他ブランドのTWS+対応イヤホンより100ms以上速かった。
7.市販のもので最も早くからaptX Adaptiveに対応したV社の完全ワイヤレスイヤホンは、公式発表によればapt-X Adaptiveの理論データでは遅延は最小で80msに抑えられるとあるが、実測では241.3msで、理論データとの差が比較的大きいという結果となった。
結論:
Android のOSのもとではかなりの程度Bluetoothコーデックを自在に切り替えられるため、選択肢はiOSよりも幅広くなります。両OSともSBCコーデックでは基本的にあまり変わりませんが、AACコーデックでは、iOSデバイスはおおむねAndroidデバイスより遅延が抑えられます。これは主にAndroidの構造的な問題によるものだと推測されます。apt-Xのパフォーマンスは理論上遅延がかなり抑えられますが、OSに大きく左右されるために、今までのところ計測された結果は理論値と大きな隔たりがあり、という結論でした。▶AERO ワイヤレス 詳細ページへ